岩手・宮城内陸地震 緊急現地調査速報
2008年 岩手・宮城内陸地震 緊急現地調査速報
日本地質学会山口大学調査団


  調査対象: 斜面崩壊、地表断層、構造物被害
  調査範囲: 岩手県奥州市〜宮城県栗原市一帯(調査位置図)
  調査期間: 7/4(金)〜7/6(日)
  調査班長: 金折裕司(山口大学理学部:地質学)
  地形地質班: 飯島康夫・福塚康三郎(八千代エンジニヤリング株式会社)
  土木斜面班: 佐藤忠信(神戸学院大学:耐震工学)
中井卓巳・福塚健次郎(株式会社アーステック東洋)


  2008年6月14日8時43分、岩手県中南部を震源とするMj=7.2の地震が発生。
  岩手県一関市〜宮城県栗原市周辺地域は最高で震度6強の強い地震動を記録。
  被災地一帯は、東北脊梁山地の東縁部であり、1500万年前以降の比較的新しい火山岩等を主体とした地層の上に、栗駒山(活火山)から噴出した安山岩類や、鬼首カルデラから発生した火砕流堆積物等が覆っている。
  宮城県栗原市栗駒文字の荒砥沢ダム周辺で発生した大規模地すべり地付近は、主に白色の軽石凝灰岩を主体とし、細粒凝灰岩や溶結凝灰岩等を狭在している。これらは火砕流堆積物と考えられており、付近一帯は地震発生以前から地すべり地形が存在していたと考えられる。
  駒ノ湯温泉を飲み込んだ三迫川上流部土石流は、栗駒山東斜面で発生し、約4km以上流下したものである。安山岩溶岩や火山砕屑岩を主体とした栗駒山火山噴出物であり、これが崩壊して流動化して土石流となったと考えられている。
  今後、大地震による被害想定を行う際に、地形と表層地質、土地利用状況等を関連付けることが重要であり、地表地震断層や地質境界に沿った地域において、緊急現地調査を行い、地盤災害と地形との関連性について検討する資料とした。
  調査結果の詳細な考察は、日本地質学会第115年学術大会(2008秋田大会:2008年9月20日(土)〜22日(月)のポスターセッションで、発表されます。(PDF形式:8.42MB)
  読売新聞にて、本調査団の活動が報道されました。

  1.地表地震断層沿いでの調査
 
  1.1真打川流域 
  1.2中川・本寺地区 
  1.3柧木立地区 
  1.4沼森地区 
  調査地点位置図
産業技術総合研究所活断層研究センター等による報告を参考に、断層変位の状況を確認しながら進んだ。
地表地震断層沿いの、岩手県一関市厳美町(小猪岡川沿い)では、小猪岡川に沿って北東-南西系のリニアメントが判読され、そのうち柧木立地区ではリニアメントに沿って地表地震断層や斜面崩壊が断続的に認められた。

  2.荒砥沢ダム上流の大規模地すべり地での調査 
 
  2.1全景
  2.2ダム左岸部
  2.3ダム流入部
  2.4滑動ブロック内
  2.5頭部陥没帯
  調査地点位置図
地表地震断層の南西側延長方向に位置する、宮城県栗原市栗駒文字(荒砥沢ダム上流部)では、荒砥沢ダム上流部で明瞭な地すべり地形が発達しており、この地震によって地すべりの再滑動が起きている。

  3.磐井川流域 震源付近への被害調査 
 
  3.1祭畤地区 
  3.2市野々原地区 
  3.3矢櫃・真坂地区 
  調査地点位置図
震源域近傍の、岩手県一関市厳美町(磐井川沿い)では、矢櫃ダム上流部の磐井川左岸には新第三紀の凝灰岩層の上位に安山岩が分布するキャップロック構造を呈しており、凝灰岩層と安山岩との境界部の明瞭な遷緩線に沿って、数箇所で斜面崩壊が発生している。

  まとめ 
 
いずれも過去に斜面崩壊ないし地すべりが発生したことを示す地形であることが明らかであり、地盤災害のリスク評価に際しては、地形・地質を関連付けて計画することが重要といえる。
調査結果の詳細な考察は、日本地質学会第115年学術大会(2008秋田大会:2008年9月20日(土)〜22日(月)のポスターセッションで、発表されます。
   
  更新履歴
  ・2008.07.10 第1報掲載